大判例

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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)8901号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二原告の表示および周知性

原告は、設立当初の昭和二〇年頃から別紙目録(編注、略)(一)記載の「CLINE」という表示および通称「サルキーマーク」と呼んでいる別紙目録(二)記載の馬車のマークをセリーヌ商品に使用して今日に至つている。セリーヌ商品は、自然で洗練された素材、英国のカシミア、エジプトのコツトン、二重にコーテイングした素材、中国のヘビーシルク、そして摩耗しない牛皮等を充分に活用した高品質の商品であり、さらにはデザインにおいても快さ、安らぎ、落着いた優雅さ等を兼ね備えているため、「パリ」のムードを十分満喫させるとの定評を得ている。従つて、日本においては、セリーヌ商品を所持することは、「パリ」のムードを備えた高級品を所持することになり、女性にとつては、憧れの的であるといつても過言ではない。特に近年、ヨーロツパへ海外旅行に行く人々が非常に多くなつて来たが、その人達がパリに立寄ると必ずと言つていいほど「セリーヌ」等フランスでの著名ブランドの商品を購入しているのが実状である。また、フアツシヨン雑誌、旅行雑誌等により、セリーヌ商品は、フランスの一級品として紹介されており、ミセス、ヤングのみならずその他の各層においてもセリーヌ商品は、原告製造のものでフランスの高級品であるということは日本においても周知のことであり、もはや、今日においては「CLINE」および「サルキーマーク」の表示を知らない者はないほどである。さらに日本において原告のブランド名を親しみやすくするために、訴外株式会社高島屋、訴外株式会社サン・モトヤマおよび訴外ジエーシーシー株式会社を通じて、別紙目録(三)記載の「セリーヌ」なる表示を昭和四二年頃からセリーヌ商品の販売ならびに宣伝に使用してきた。

しかも、日本における原告のブランドを高めるため、右訴外三社を通じて、別紙目録(一)ないし(三)が原告の商品を表示するものであることを周知させるために、強力な大衆宣伝活動を行なつてきた。

従つて、別紙目録(一)ないし(三)の表示は、原告の商品なることを示す表示として、わが国において広く認識されている。

三被告の表示および使用態様

被告は、被告の経営するスペース・スリーナイン渋谷店においては昭和五二年一月から、スペース・スリーナイン銀座店においては昭和五二年七月から、セリーヌ商品とほとんど類似し、かつ、別紙目録(一)または(二)あるいはその双方の表示を付した、品質の粗悪なスカーフ、ベルト、バツグ、ネクタイ、ブラウス(以下「本件商品」という。)を商品の出所混同を生ずることを予見しながら、故意にフランスのセリーヌ商品であると偽つて表示し販売ならびに所有占有している。また、被告は、本件商品の宣伝のために別紙目録(三)記載の表示を使用して、大々的に宣伝活動を行なつている。

四営業上の利益損害

被告は、別紙目録(一)、(二)の表示を付してセリーヌ商品とほとんど類似した本件商品を日本国内でフランスのセリーヌ商品であると偽つて表示しながら、昭和五二年一月から同年九月二一日まで少なくとも金八、〇〇〇万円の売上げを計上しており、そのために原告は、セリーヌ商品は「パリ」のムードを備えた高級品であるというイメージをダウンさせられ、さらには、被告が原告の日本国内で販売する通常の価格より相当廉価に本件商品を販売しているため、相当数の顧客を喪失し、売上の減少を余儀なくされたのであり、原告の蒙つた損害は、被告の右売上げ金八、〇〇〇万円の一〇パーセントにあたる金八〇〇万円を下らない。

五信用回復措置

原告は、被告の右のような所為によつて著しくその信用を毀損せられたのであり、被告は、原告の信用を回復する措置として、別紙記載の謝罪広告を別紙記載の要領で、読売新聞朝刊東京都内版及び東京都多摩版に各一回掲載する義務がある。

六よつて、原告は、被告に対し、被告が販売する本件商品およびその広告に別紙目録(一)ないし(三)記載の各表示を使用し、またはかかる表示を使用した本件商品を販売することの差止、被告が所有する本件商品からの右表示の抹消、前記損害金八〇〇万円およびこれに対する前記侵害行為の後である昭和五二年一〇月一日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払ならびに前記の文面、要領による謝罪広告の掲載を求める。

(秋吉稔弘 佐久間重吉 安倉孝弘)

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